多くの人は、愛する人ができると、生涯を共に過ごそうと考え、結婚するかしないかということを真剣に考えるようになります。

結婚するもしないも、それぞれの人生であり、どちらがいいとか悪いとか、決めるのは最後は自分なのですが、そうはいかない人もいます。

 

毒親育ちの方々は、結婚をするという、本来ならおめでとうと祝福されてもいいことであるにもかかわらず、親から認められなかったり、否定されたり、反対されるだけならまだましなほうで、邪魔されることもあります。

今回は、毒親育ちが結婚することについて、詳しく考えていきましょう。

毒親育ちの学生時代の恋愛

毒親育ちの子供たちは、そもそも、友達関係さえ自由にはさせてもらうことはできません。

 

学生のうちは、この友達と遊ぶのはやめなさいと言われたり、親が気に入った相手でなければ、一緒に過ごして遊ぶことすら、認めてもらうことはできません。

親との約束を破ると、否定されたり、悪口を言われたり、もっとひどい場合は体罰で、子供を支配しようとします。

 

同じように、友達だけではなく、恋愛においても親からの制御があります。

そもそも、恋愛自体、禁止されることも多いようです。

私自身も子どもの頃、友達は親が許可した人としか遊んではいけないと言われてきましたし、恋愛なんてもってのほかでした。

子供の分際で好きだの惚れただの、ありえないと言われ続けてきましたし、それらは悪であると教えられてきました。

誰かを好きであると言うような発言も素振りも見せてはいけませんでした。

学生なら勉強をしろ、親を手伝え、働かざる者食うべからず、恋愛にうつつを抜かしている暇はないと、口酸っぱく言われてきました。

 

例えば小中学校では、○○先輩がかっこいいとか、好きだとか、誰が誰に告白されたとか、付き合っているとか、そんな話は友達同士で普通にする会話だったはずです。

私も当時、あの先輩かっこいいな、と思う人がいたりして、先輩と部活が同じだった友達が、先輩の卒業前に写真を撮ってきてプレゼントしてくれたことがありました。

親に見つかってはいけないと、私も机の中に大事にしまっておいたのですが、親が勝手に机を物色し、その先輩が写っている写真を見つけてしまいました。

学校から帰ってくると、居間のテーブルにその写真がどんと置いてあり、一瞬で血の気が引きました。

母は、これは何?と短く聞いてきました。

私も、突然のことで良い理由が思い浮かばず、友達からもらったの…と答えることしかできませんでした。

母は、この人は誰なの?と、語気を強めてさらに聞いてきました。

私は、学校の先輩だよ、としか答えられませんでした。

母は、好きとかどうとか、そういうのあんたはいらないからね、学校では勉強してればいいんだから、こんなの捨てていいよね?と言いました。

私は、怖くてそれ以上抵抗できず、うん…と返事をし、母はその写真をその場で破り、細かくちぎってゴミ箱に捨てました。

私は、泣きそうになるのを必死で我慢して、できる限り普通にふるまいました。

みんなが寝静まってから、写真を回収できるか、ゴミ箱を確認しましたが、ご丁寧にゴミ袋は新しいものに変えられており、写真の入った袋は既に外に出されていました。

さすがに外まで行けば家族が気づいて起きてしまうので、あきらめるしかありませんでした。

 

このように、毒親にはプライバシーという考え方は無く、カバンの中や机の中など、平気で中身を確認されます。

それも、わりと頻繁にです。

何かを隠しておくことは、到底不可能です。

 

恋愛そのものも禁止ですから、好きな人がいること自体がもう気に食わないのです。

両想いで、付き合うなんていうことになって、それがばれてしまった時も、子供がいい気になるな、恋愛なんてお前がしていいものじゃない、恋愛をする価値がある人間だと思うなと言われます。

恋愛をするなら、親に完全に隠すか、絶対にばれないようにするしかありません。

毒親とは、そういうものなのです。

ばれてしまったら、殴られるか、外出禁止になるか、とにかく制限がもっと厳しくなって、普通の生活ができなくなってしまいます。

毒親育ちの大人になってからの恋愛

大人になれば、恋愛が自由にできるかといえば、そうでもありません。

何歳になっても、毒親から見れば、子供は自分の所有物です。

恋愛など許すことはできないのです。

 

親元で暮らしている場合は、親から絶対に見つからないように恋愛するか、独立して物理的に遠く離れた場所で暮らし、その上で恋愛をするしかありません。

よく、友達みたいに恋の話を母親とするなどという人の話を聞きますが、我が家では絶対に考えられないことでした。

同時に、とてもうらやましい環境だなと感じました。

 

親に話せると言うことは、親子共々、お互いに相手を信頼していると言うことです。

信頼しているからこそ、正直に話せるし、自由にさせても大丈夫だと思えているということです。

 

もしも、私が恋愛の相談なんてしようものなら、母は間違いなく私を家から出さないようにして、連絡手段を全て断ち、外部との接点を無くそうとしたでしょう。

学校や仕事など、外出が必要なことに対しては、おそらく門限を厳しくして、何時までに絶対に帰宅、などのルールを設け、それを破れば殴ったり叩いたりする体罰などを与えたでしょう。

そういうことを、それなりに大きくなった子供に対して簡単にできてしまうのが、毒親なのです。

 

話しを戻しますが、大人になってからは親元を離れたので、自由に恋愛することができました。

好きな人ができたり、誰かに告白されたり、付き合ってみたり別れてみたりもしました。

それまで制限され続けた恋愛が自由にできるとなり、私は少し恋愛依存な時期もありました。

 

親に内緒で、恋愛をすることは、危険も伴います。

何でも話せる親なら、恋愛でも相談することができるでしょう。

その中で、危ないなと思うところがあれば、その時は親が子供を守ったり、どうすればいいか一緒に話したり、考えたりすることができるでしょう。

毒親には、必要以上に、いいえ、なにもかも制限されることが分かっているので、子供は何でも隠そうとします。

隠すということは、危険が迫っていても、気づいてあげることができません。

結果的に子供を危険にさらすことになるのです。

毒親育ちの結婚

自分の両親のようにはなりたくない、という思いが一番にありました。

結婚しないで、一生独身でもいいなとも思っていました。

適当に誰かとお付き合いをして、デートしたり食事をしたりして、それなりの関係でいて、うまくいかなくなったら別れて…、それでもいいと、ずっと思っていました。

仕事一筋、一生独身、なんて現代的な生き方なんだ!と、考えていました。

 

しかし、一人の人と長くお付き合いをしていると、結婚を自然と意識するようになりました。

結婚が頭に浮かんでも、その後のことを考えると、簡単には決められませんでした。

毒親との関係もあり、結婚したいと打ち明けたり、付き合っている人がいますと紹介するなど、考えられませんでした。

紹介したら、私のことをバカにした発言をするのはもちろん、もしかしたら、相手のことも何か言ったりするかもしれません。

そして、結婚に反対されることも分かっていたので、結婚するとなれば、その反対を押し切ってするしかありません。

もしも離婚して、実家に戻りたいなんて言ったら、ほら見ろ、お前は何もできない、結婚生活もまともにできなかった、何もできないから追い出されてきたんだろうと、罵倒されるのが目に見えています。

絶対に後戻りできない結婚になることが分かっていましたから、結婚を決めることも、とても重い決断でした。

 

でも、独身でいる限りは、私の家族と言うのは、一生、親や兄弟だけのままになってしまいます。

結婚だけが、新しい家族を作るたった一つの方法だと思いました。

毒親の呪縛から解放される、唯一の手段でもあるのだと感じました。

最終的に私は、結婚をすることに決めました。

毒親育ちの結婚の挨拶

お付き合いだけの時とは違い、結婚となると、家族に一応話しておく必要があります。

一応、というのは、祝福されないことが分かっているけれど、親せきになる以上、パートナーにも知っておいてもらう必要があることを含め、言いたくないけれど言わなくてはいけないかな、という義務感です。

成人していれば、親の了承など無くとも結婚はできるのですが、毒親とはいえ、自分にとっては親なのです。

 

会いたくもないし、絶対に反対されたり、根掘り葉掘り、関係の無いことまで聞かれたりするだろうと予測できたため、本当に嫌で嫌で仕方ありませんでしたが、私は今の主人を実家に連れて行きました。

父も母も、こんな何もできない娘のどこがいいのかとか、短所しかないのに、一体どこを好きになったのかとか、バカにしながらも面白半分でいろいろな質問をしていました。

質問だけは好き勝手にするくせに、最終的にはいいのかダメなのか、結婚に対しての返事は一つもないまま、実家訪問は終わってしまいました。

 

今の主人がいない場面で、お前には結婚なんかできない、と言われました。

すぐに離婚する、などの否定と、育ててやった恩を忘れたのか、など、結婚よりももっと親への恩返しをしろ的なことを言われました。

うちの両親は、たまたま外面が良かったので、主人の目の前ではそこまでひどい発言はありませんでしたが、家族だけの場面になったとたんに、あきらかに結婚には反対で、親のために生き、親のために働き、親の老後の世話をしろ、お前は親不孝者だ、と言いました。

分かってはいましたが、本当にむなしく、悲しく、がっかりし、疲れました。

 

それでも、反対されたままではなく、お許しをいただいてから、気持ちよく結婚したいと言ってくれた主人は、その後も何度も実家に足を運んでくれました。

最終的には、両親は折れ、そんなにこんなのと結婚したいなら好きにしたら、と言います。

祝福とか、おめでとうとか、娘をよろしくお願いしますとか、そんな普通の家庭なら出てくるような言葉も無く、本当に、とりあえず許可をもらった、という状態でした。

 

感心が無さそうなわりには、入籍や、同居のタイミングなども、うるさく口出ししてきて、とても煩わしかったです。

否定するくせに口出しはする、ちなみに金は出さない、それが毒親です。

 

それでも、私の両親に何度も会いに行ってくれ、根気強く話をしてくれた主人には、本当に感謝しています。

主人には、事前に両親の話をしておいたので、そこまで驚きはしなかったようです。

それでも、特殊な両親を見ても結婚を考えなおしたりせず、その後もこうして私のような人間と一緒にいてくれるのは本当にありがたいことです。

 

ちなみに、入籍しても、両親からおめでとうの言葉は言ってもらっていません。

念のため報告はしていますが、あっそう、とだけ言われました。

怖いのはなぜ?

毒親育ちが恋愛や結婚を怖いと思うのは、過去の記憶のせいです。

友人関係ですら、毒親の言動によってダメになってしまったりした記憶は、ずっと残っています。

 

自分を否定され続けてきているので、自分に自信がなかったり、こんな自分が誰かに愛されるわけがない、そんな資格は無いと、思い込んでしまっています。

私も未だにそういった気持ちはあります。

友達、同僚、仲良くなればあるほど、突然何かがきっかけで、私との交友関係をやめるかもしれない、そもそもなぜこんな私と仲良くしてくれているんだろう、と考えることが良くあります。

 

いままで破壊されてしまった関係や、否定されてきたのは過去のことです。

毒親から見えない生活範囲や、親元から離れたりしてからは、あなたを愛してくれたり、他人のうわさを聞いてもあなたを信じてくれたりした人が、誰かいたのではないでしょうか。

 

過去の経験は、とても悲しいものです。

だからこそ、新しい人間関係、特に、恋愛や結婚は相手ととても強い信頼関係が必要ですから、慎重になります。

大切にしたい関係であるし、壊されたくないからこそ、怖いと感じるのです。

簡単に取り換えたり、すぐに次が見つかるものではないかもしれません。

怖くなる気持ちは非常によく分かります。

しかし、もう毒親から解放されていいのです。

こんなに怖いと思うのは、それだけ、相手を大切に思っているということです。

そこまで大切に思える相手を、信じてみてもいいのではないでしょうか。

 

まとめ

結論として、毒親育ちでも、結婚はできます。

しかし、結婚に至るまで、また、結婚後のいろいろなトラブルを思うと、結婚を避けたいと考える気持ちも、とてもよく分かります。

 

結婚するかしないかは、自分で決めることができますし、人生の幸せと直結しているわけではありません。

独身でも楽しいことは山ほどありますし、私も、たまには独身時代のように遊びたいなぁとか、結婚していなかったらどんなふうに過ごしていたかなと考えたりすることもあります。

 

どちらにせよ、それまでの制限だらけの人生を塗り替えるように、いろいろな挑戦や、経験をしたいと思うかもしれません。

新しい家族を作るとなると、結婚が一番その近道になると思います。

毒親育ちが親になる挑戦、しっかり環境を整えて、責任を持って、パートナーと協力して、いろいろな考え方を受け入れ、子供を幸せにする覚悟ができているなら、一歩踏み出してもいいのではないかなと思います。

 

毒親の種類にもよりますが、結婚前のあいさつなどで両親と結婚相手を会わせなければいけない場合、結婚相手にショックを与えてしまったり、毒親の受け答えによっては破談になることも十分考えられます。

事前に両親がどんなことを言うのか、どんな反応をする可能性があるのかをしっかりお相手に伝えておき、できるだけびっくりしないで済むように、準備しておくしかありません。

毒親を目の当たりにしても、あなたを大切にしてくれ、尊重してくれ、それでも結婚をやめないというお相手なら、その後の長い結婚生活で、ずっと一緒にがんばっていけるかもしれません。

そういう意味では、毒親を一度見てもらうということは、大切な段階なのかもしれません。

怖さを乗り越えて、大切な相手を信じてみるのも、新しい一歩だと言えます。

 

毒親育ちでも、新しい家族を作ることを、あきらめる必要はありません。

毒親の影響が全く無いとは言えませんが、それでも、自分で築いた家庭が幸せになるかどうかは、自分で少しづつでも変えていくことができます。

新しい家族と幸せになることで、自分に自信を持ち、毒親の連鎖を断ち切ることができますように!