前回は、あまり計画も立てずに突然山へ昆虫探しに行ってきました。
大本命のカブトムシ、クワガタムシには出会うことができないまま、息子をがっかりさせて最終的には泣かせ、マクドナルドでハンバーガーを買って帰るまでのお話をさせていただきました。
ですが、親として、このままでは終われません!
何が何でも自然にいるカブトムシたちと出会い、子どもの驚いたり喜んだりする姿を見たい!
ここで本気を出さずして、いつ本気を出すんだ、私!
仕事の夏休みも週末で終わってしまいますから、やるなら今しかありません。
というわけで、不発に終わった前回の山登り後、すぐにリサーチをはじめました。
我ながら今回はかなりがんばりましたので、ぜひお読みいただければ幸いです。
リベンジするからには
前回のように、何も見つかりませんでした、と、失敗して帰るわけにはいきません。
今回は今年の夏休みの最後のチャンス。
これを逃したら来年まで、昆虫の王様と自然界で出会うチャンスはほぼ皆無です。
子どもたちが寝静まってから、検索、検索、検索の嵐です。
前回は情報収集が足りなすぎたので、その反省を生かし、今回は過剰なほど情報を集めてやろうと考えました。
…が、しかし!
カブトムシ、クワガタの捕獲情報というのは、意外に少ないことが分かりました。
なぜなのでしょうか。
調べてみると、カブトムシなどの捕獲場所や、ここで見かけた!という具体的な情報を公開してしまうと、金儲け目当ての大量捕獲が目的の人が集まってしまったり、逆に私と同じような素人も昆虫たちをむやみに捕まえて、その地域の昆虫たちの乱獲により、生態系に悪い影響を及ぼしてしまったり、昆虫たちの数が減り、将来生まれてくるはずだった昆虫たちまで減ってしまったり、とにかく悪いことが起きてしまうことが分かってきました。
たしかに、一時期のマスク不足のときもそうでした。
ここで売っているよという情報が流れると、その店舗にお客さんが集まってしまったり、開店前の行列ができて、むしろ密になってウイルス感染のリスクが増したり、転売ヤーももちろんその店に仕入れにいくので、さらに品薄になったり、入手困難が続き、悪循環でしたね。
だからこそ、昆虫が大好きとか、本当に純粋に子どもに見せたいと思うなら、自分で捕獲ポイントを開拓していく必要がありますし、見つけたら見つけた分だけすべて持ち帰ったりしてはいけません。
責任を持って飼育できる数だけにすることが大切です。
次世代に命をつなげていくことも忘れずに、節度ある昆虫採集を楽しみましょう。
また、昆虫採集の際に、樹液を出させるために木に傷をつけたり、木の根元などを掘り起こして、隠れている昆虫を探したりすると、木を傷める結果になってしまい、将来的にそこに住む昆虫たちにとっても、心地よい環境でなくなってしまい、昆虫の数が減ってしまうなど、そもそも森そのものを破壊することにつながりかねません。
絶対にしないようにしましょう。
また、森林が私有地であったり、公共の場所であっても、その土地に立ち入ってはいけない場合や、昆虫を持ち帰ったりすることが禁じられている場合もありますので、よく確認し、所有者に許可を取るなどしてから、昆虫採集をするようにしましょう。
さて、事前の注意事項が長くなってしまいましたが、ここからが本番です。
私のような完全な素人でも、しっかりポイントを押さえれば、目当ての昆虫たちに出会うことができます。
ひとつひとつ見ていきましょう。
どんな場所にいる?
昆虫たち、特に今回は、カブトムシやクワガタムシは、どんな場所に生息しているのでしょうか。
私、実は盛大に勘違いをしていたのですが、山である必要は全くありません。
平坦でいいので、虫たちが好む樹液が出る木々が生えた森林であればよいのです。
前回、とにかく山を連想した私は、ただ登って下りて収穫の無い登山をしてきてしまいました。
カブトムシたちの好む樹液の出る木は、クヌギ、コナラです。
幹がまっすぐ直線的に伸び、葉が細い針葉樹林の森ではなく、幹が少し曲がって伸び、葉の面積が広い広葉樹林をまずは探しましょう。
もちろん、両方が混ざって生えている場所もあります。
広葉樹の中で、クヌギとコナラを探します。
幹には縦線の不規則な深いすじが入っていて特徴的です。
他の木と明らかに違うので、実際に見ればすぐ分かります。
本当にざっくりと言うと、どんぐりのなる木です。
どんぐりのなる木は葉っぱも特徴的です。
木が見分けられれば、あとはもう簡単です。
その中で、樹液が出ている木を探しましょう。
樹液は甘酸っぱい匂いがするので、匂いで分かる方もいるようです。
私は正直、匂いでは分からなかったので、
クヌギとコナラの木のひとつひとつを裏側もぐるりと見て、樹液が出ているか確認しました。
日中の下見の時点で、木の幹から白い泡が出ていたり、天気がいいのに雨で濡れたようになっていたら、チャンスありです。
カナブンやカミキリムシ、スズメバチなどが集まっていたりしたら、もうカブトムシを見つけたも同然です。
夜にもう一度その場所を確認すれば、昆虫の王様がそこであなたを待っているはずです。
木の状態の他にも、雨の日などは羽が濡れてしまったりするためか、活動しない傾向にあるようです。
気温が低くなったときも、あまり活発に動かなくなるという情報もありました。
天気の良い熱帯夜が、ねらい目ということになります。
決行するときは、週間天気も気にする必要があります。
トラップも持参してみたが…
失敗が許されない戦いだったため、念には念をいれて、またトラップも用意することにしました。
カブトムシ、トラップ、と検索すると、いくらでも出てくるのですが、その中でも、ペットボトルを切って作るタイプと、ストッキングを使うタイプの2種類を用意し、中にはバナナに焼酎とドライイーストを混ぜたものを入れました。
すごい匂いがするので、これは効果が期待できそう!と思ったのですが、やはり自然の樹液の匂いや味にはかなわないのか、結論としては、トラップには全く大物はかからず、たくさんのアリが群がっていたり、カマドウマらしきものが中に入っていたりと、今回は全くトラップの意味を成しませんでした。
トラップを設置した場合は、どこに設置したかを忘れないようにして、必ずすべて回収して持ち帰りましょう。
見つかる時間帯は?
前回の失敗の原因のひとつとして、出発時間が遅かったことが考えられます。
完全に日が昇り、気温も上がってからでは、夜行性の昆虫たちは隠れてしまいます。
状況が許すなら夜間が一番出会える可能性が高いでしょう。
夕方の時間帯も、チャンスはあります。
なぜなら、今回、まだ明るい17:30頃に下見とトラップの設置をしてきたのですが、実はその時点でカブトムシを見つけてしまったからです。
トラップを置こうと木に近づいてみると、大きくて黒々とした光沢の何かが見えました。
そうです。紛れもない、昆虫の王様がそこにいたのです。
立派なツノの、オスのカブトムシでした。
しかしこの時点では子どもは連れてきておらず、私が捕まえて喜んで帰っても何の意味もありません。
樹液に集まる昆虫たちの、自然の姿を見せることが、今回の最大の目的です。
ですが万が一、翌日にカブトムシに会えなかったとしたら、それはそれで困ります…。
しばらくその場で悩みましたが、涙を呑んで、翌日カブトムシにもう一度会えることを期待して、家に帰ることにしました。
リベンジの結果は…
家に帰ってからも、無事に子どもたちにカブトムシやクワガタムシを見せてあげられるだろうか…
明日急に天気が崩れて、出かけられなくなってしまわないだろうか…
もしカブトムシに会えたら、子どもたちはどんな反応をするのかな…
不安と、楽しみとで、まるで遠足前の小学生のように、翌日は3:30に起きなければいけないにもかかわらず、眠れなくなりました。
子どもたちと一緒に9:00には横になったのに、実際に眠れたのはおそらく1:00頃で、2時間半後には無情にもアラームが鳴り響きました。
眠さが尋常ではありませんでしたが、子どもたちのためです。
主人も起こして、子どもたちにも声をかけます。
前日から離していたためか、子どもたちは眠そうではあったものの、不機嫌になったりせず、すぐに起きてくれました。
飲み物と、冷蔵庫にあった茶わん蒸しを少しだけ食べさせ、すぐに着替えて出発です。
まだこの時点では日が昇っておらず、外は暗かったです。
車で移動する間、少しづつ空が明るくなっていくのが分かります。
息子は、『カブトムシなんか絶対いないよ、見つからないって!』
なんて言いながら、見つからなかったときのために、自分に言い聞かせるかのようにネガティブ発言をしていました。
下の子は、『こんな夜のおでかけ初めてだねぇ』と、うれしそうです。
本当にこの子はマイペースです。しかもどちらかと言えば夜でなくて朝です。
目的の場所に到着すると、まだ少し暗い森に入るのは怖いようで、『ちょっと怖いな』と息子が言いました。
手をつないで、一緒に歩いていきます。
途中、小さなカエルがいて、虫かごにいれたいと言われましたが、カブトムシを入れるものがなくなってしまうので、そこは我慢してもらいました。
ちょうちょがひらひらと横切ったりして、何かいるかもという期待は高まります。
トラップを仕掛けた場所にたどり着きました。
アリが大量に集まっていて、大きな昆虫の姿はありませんでした。
息子も、『ほら、アリしかいないじゃん』と言います。
さらに進んで、数か所のトラップを確認しましたが、目的の昆虫はいません。
息子も私もあきらめかけたとき、トラップを仕掛けた木の裏側から樹液が出ているのに気が付き、
懐中電灯で上から下に幹を照らして確認してみました。
幹のかなり下のほうに、つやのある昆虫が数匹見えました。
カナブンです。緑や茶色のものがいました。
息子は、『カナブンはこの前も見つけたもん』と興味が無さそうです。
あ!と、私が声をあげました。
子どもたちがすぐに近寄ってきます。
カップルのクワガタムシが、樹液から少し離れたところでくっついていました。
『すごい!クワガタだ!』と、息子も笑顔になります。
息子は怖がって直に手でつかまえるほどの勇気は無く、私が持ってきていたアミを使って、二匹一緒に虫かごに入れました。
虫かごを持って目線の高さまで持ち上げて、ずーっと嬉しそうにニコニコしながら、足元を全く気にせず、時々、木の根っこにつまずきながらも、『ひっくり返ってる、助けてあげなきゃ』と、自分よりクワガタの心配をしながら虫かごの中をのぞき続ける息子の姿を見て、ここまでやって、本当に良かったと思いました。
『ここなら、カブトムシもいるかも』と、さっきまでとは打って変わって、息子の発言も前向きになります。
足取りも軽くなり、ほとんど走りながら進んでいくので、持っている虫かごの中のクワガタもブンブン振り回されて心配です。
さらに進んで行き、トラップを回収しながら(もちろんトラップは全く成果なし)、前日にカブトムシのいた木が近づいてきました。
私は一人でドキドキしながら、さりげなくその木に近づきました。
すると、昨日よりももっと多くの昆虫たちが、樹液に集まっているではありませんか。
数匹のカナブンたちの中心に、一番よく樹液が出る場所をカブトムシが陣取っていました。
カブトムシだけで5匹は確認できました。
息子も、樹液に群がるカブトムシを見て、『すごい!本当にいる!』と興奮気味に声をあげます。
木の幹の高い位置に集まっていたことと、逆に足場は急な傾斜になっていて、子どもの手ではどうやっても届かない場所だったので、私が藪をかき分けて近づき、アミを持った手をのばしてカブトムシをつかまえます。
アミが覆いかぶさると、カナブンはすぐに飛んで逃げていきましたが、カブトムシは木の幹にしがみついて、飛んで逃げようとしないのが不思議でした。
アミにはメスのカブトムシが2匹入り、他は逃げたかと思ったのですが、少し小ぶりのオスがメスにくっついてアミの中に落ちてきました。
こちらもカップルだったようです。
そうしてつかまえた3匹を虫かごに移動させる間、メスのカブトムシの1匹は飛んで逃げていきました。
カブトムシも、ペアで観察できれば大満足ですので、オスメス1匹ずつ持ち帰らせていただくことにしました。
息子は、もっと探したいと言いましたが、とりすぎると、いなくなってしまうことなどを話すと分かってくれたようで、『この子たちを大事に育てる!』と約束してくれ、これで家に帰ることも納得してくれました。
まとめ
今後、コロナウイルスが収束するのかどうか分かりませんが、昔は子どもの頃に誰もが体験してきたはずの、屋外での人が密集しない場所での遊びや体験が、今後はさらに見直されてくるのかもしれません。
今年の夏休みは、海へ山へ、子どもたちと一緒に健康的にアクティブに遊ぶことができました。
日焼けも虫刺されも、子どもと一緒に過ごした時間の勲章です。
そんな誇らしいもののように言っていますが、歳のせいか治りが遅く、いつまでたっても虫刺され跡が残っていて悲しいです。
実家への帰省もできなかった分、子どもたちとじっくり濃厚な時間を過ごせたと思っています。
普段はできないような遊びは、必ずしも遠出をしなくても、整った施設でなくても、少しの予習と工夫があれば、いくらでも楽しむことができます。
だからこそ、マナーや節度を守って、みんなが楽しめるように意識した行動をしたいと思います。
そうして、次世代へ命をつなぎ、自分の子どもが孫と、同じ場所で昆虫探しをしたら…なんて、気の早い妄想をするくらいは許してくださいね。
昆虫たちの飼育用品の準備のお話も、ぜひお読みください。
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